ヒバクシャ ドキュメンタリー映画の現場から(2)
ヒバクシャ ドキュメンタリー映画の現場から(1)の続きです。
あなたは、「ひばく」と聞いて、どんな漢字を思い浮かべますか?
私がまず思い浮かべたのは、「被爆」という漢字でした。
だから、この本のタイトルであるところの「ヒバクシャ」も、「被爆者」だと思って、
つまり、原爆の被爆者に関する本かと思って、読み始めました。
そう思って読み進めていったところ、「被曝」という言葉が出てきました。
『「イラクの子どもたちに起きているのは被曝だ。劣化ウラン弾の放射性の微粒子が体内に入って弱い放射線を出し、細胞のDNAに傷を付けている。それがやがて白血病やガンになる。(中略)これが体内における低線量被曝というもので、現代の医学をもってしても治すことはできない」
(中略)
「ひばく」といえば、「被爆」という漢字を使うが、これは体の外から放射線を浴びた場合の「ひばく」であり、身体の中から浴びる場合は「被曝」という漢字を使う。しかし私は、カタカナで「ヒバクシャ」と表現することにした。』
という訳で、この本は、被曝者についてのドキュメンタリー映画ヒバクシャ―世界の終わりにに関する本です。
日本の原爆による被曝者、イラクの劣化ウラン弾による被曝者、そしてアメリカのハンフォード核施設による被曝者が登場します。
被爆と被曝、という言葉の使い分けに関する知識はあやふやでしたが、日本で今も原爆症に苦しむ方々がいること、イラクで劣化ウラン弾の影響でガンや白血病で亡くなっていく子どもたちがいること。
そういったことは、以前から知っていました。
一方、ハンフォード核施設による被曝者の話は、この本を読んで初めて知りました。
ハンフォード核施設とは、
『アメリカ、ワシントン州シアトル市から南東へ約350キロの位置にある。
第二次世界大戦から1987年の全面的生産停止までに、約55トンの兵器用プルトニウムを生産。それは長崎に投下された原爆に使用された。
(中略)89年以降は、年間約20億ドルの予算で、放射性物質による汚染の除去作業に取組んでいる。』
という施設です。
そして、ハンフォード核施設による被害状況は、
『149個の一重タンクのうち、60個以上のタンクから廃液が漏れ出している。その漏れた廃液は、地表から約65メートル下の地下水に達しているものもあり、コロンビア川で実際に放射能が検出されている。
今後さらに、プルトニウム、ウラン、ストロンチウム90などが地下水に到達し、住民の飲料水や農業に使われ、アラスカ海域で捕れる多くのキングサーモンの産卵場所でもあるコロンビア川の汚染がさらに深刻になる。』
だそうです。
また、この施設では、1949年12月、故意に放射性物質を放出する実験が行わました。
その実験とは、
『キセノン133が2万キュリーと、ヨウ素131が1万1000キュリーも大気中に放出された。これは、当時の放射線許容量の1万1000倍で、しかも当時の許容量は今日の20倍であった。』
というものでした。
そして、
『この実験がマスコミで明らかにされたのは実験から40年後の89年5月。
放射性物質の大量放出により、広範な住民、特に施設から風下の住民に、甲状腺障害、ガン、先天障害など多くの健康被害を与えた。家畜の中には、頭が2つあったり、目玉がないなど奇形の赤ちゃんがたくさん生まれた。』
そうです。
ちなみに、このハンフォード核施設の周辺は農場で、そこで生産された農産物(ジャガイモ、牧草など)は、日本にも輸入されています。
『参考サイト:
中國新聞 21世紀核時代 負の遺産(アメリカ編)』
ヒバクシャ ドキュメンタリー映画の現場から(3)に続く。。。