軍隊は何を守るのか?
改憲派の方の意見で良く見かけるものに、
「自分も平和を望んでいる。でも、武力で守らなければならないものがある。」
というのがあります。
だから、自衛隊が必要。
更には、憲法を改正して、日本も軍隊を持つべき。
という意見のようです。
ここで、ハッキリさせておかなければいけないのは、「軍隊は何を守るのか?」だと思います。
軍隊は、国民を守るものではありません。
マガジン9条『伊藤真のけんぽう手習い塾』の第六回 憲法が目指す平和主義から引用します。
『外国が攻めてきたときに、軍隊に私たちの生命と財産を守ってもらう必要がある。そのためには自衛軍が必要だという意見はわかりやすいものです。(中略)万が一に備えるのが国の責任なんだからというわけです。
さて、こうした方が期待するように軍隊は国民の生命と財産を守ってくれるのでしょうか。残念ながらそうではありません。
沖縄戦では、住民が足手まといや、食糧不足の要因にもなるということで、日本軍によって大量に殺害されました。野戦病院にも民間人は入れてもらえませんでした。
(中略)
1977年の米軍戦闘機墜落事故の際に自衛隊は、墜落地の横浜市民の犠牲者を無視し、米軍乗務員を救出しただけでした。
2003年にはアメリカの原子力潜水艦が日本の高校生の乗った実習船「えひめ丸」に衝突し、9名が亡くなりましたが、潜水艦乗組員が高校生を救出することはしませんでした。
古今東西、そもそも軍隊は住民や国民を守るものではないのです。前回も司馬遼太郎さんの「軍隊は住民や国民を守るものではない。」という言葉を引用させていただきましたが、このことは軍事の専門家も常識だと言っています。
潮匡人さんという自衛官出身の軍事専門家の方が、「軍隊は何を守るのかと言い換えるなら、その答えは国民の生命・財産ではありません。それらを守るのは警察や消防の仕事であって、軍隊の本来任務ではないのです。」とはっきりと指摘されています(『常識としての軍事学』中公新書ラクレ188頁)。これが軍事専門家のいうところの軍事の常識なのです。私たちもこの常識を前提に議論しなければなりません。
それでは軍隊が何を守るのかというと、国体、または日本の文化伝統ということだそうです。ひとり一人ではなくて抽象的な国を守るというわけです。
間違っても、外国が攻めてきたときに、私たち住民、国民を軍隊が守ってくれると考えてはいけません。外国が攻めてきたときに、私たちの命や財産を守ってもらうために軍隊が必要なんだという議論は、そもそもその前提において軍事の常識から外れてしまっていて成り立たないのです。』